症例報告【歩行時のバランスの不安定】

症例報告
年代:60代
職業:主婦
性別:女性
主訴
歩行時、特に右足に荷重した際にバランスを崩しやすく、不安定になること。あわせて腰痛も強く、長時間の歩行や立位動作が困難。
原因
右股関節の可動域制限が顕著で左右差が大きく、歩行動作の不安定さにつながっている。また、既往に脊柱管狭窄症があること、さらに姿勢の崩れや背骨の柔軟性低下も要因となっている。痛みの影響で猫背姿勢が助長され、胸椎や肩周囲の動きが固くなることでお腹の力が抜け、結果として腰部に負担が集中し腰痛を増悪させている。
既往歴
脊柱管狭窄症
お悩み
・歩行時にバランスを崩しやすく転倒が不安
・腰痛により日常生活や外出に制限がある
・長時間歩けず、買い物や家事で疲れやすい
・趣味であるテニスを継続できないことが大きなストレス
初回の状況
初回評価では、右股関節の可動域制限が顕著で、左右差がはっきりと認められた。さらに、姿勢は猫背傾向が強く、胸椎や肩周囲の柔軟性が低下しており、体幹の支持力不足から腰部の負担増大が確認された。腰痛も強く訴えられ、歩行時には右足荷重で大きくバランスを崩す場面が多くみられた。
初回施術では、運動療法と手技療法を組み合わせ、特に骨盤周囲から臀部にかけての可動域改善を中心にアプローチ。歩行時に股関節がしっかり動き、腰への負担を軽減できるようサポートした。また、胸椎や肩周囲の柔軟性を引き出し、体幹の働きを高めて腰痛の軽減につながる姿勢づくりを行った。施術後には「少し歩きやすい」と変化を実感された。
6回目の状況
施術を継続することで、歩行の安定性は改善傾向を示し、当初は10分程度で腰痛や不安定感が出ていたが、現在は20〜30分連続歩行が可能となった。腰痛も軽減し、日常動作での負担が減ったと実感されている。しびれや痛みは完全には消失していないが、明らかな改善があり、以前よりも外出への意欲が高まっている。
また、趣味であるテニスにも週1回参加できるようになり、「またテニスを楽しめるようになった」と笑顔を見せられている。ただし、まだ痛みやしびれが出やすい状態が残るため、今後は胸椎や肩周囲の柔軟性をさらに高め、体幹と股関節を安定して連動させることを重点に進める。最終的には週2回のテニスを無理なく継続できる身体づくりを目標にしている。
まとめ
本症例は、脊柱管狭窄症の既往に加え、股関節の可動域制限や姿勢の崩れにより、歩行時の不安定さと腰痛を強く訴えられた60代女性のケースである。初回から6回目までの経過で、腰痛の軽減と歩行距離の延長、趣味活動への復帰といった改善がみられた。しかし完全な安定には至っていないため、今後も体幹・股関節の機能改善を図りながら、日常生活と趣味を安心して楽しめる身体づくりを継続して支援していく予定である。