症例報告【左肩周囲の可動域制限】

症例報告
年代:70代
職業:理容師
性別:女性
主訴
左肩周囲の可動域制限。仕事で腕を頻繁に使用するため、特に肩を90度程度挙上した姿勢を続けると痛みや疲労感が強く、作業の継続が困難になる状態。
原因
長年の理容師としての業務により、常に腕を挙げている時間が多く、肩や首周囲に負担が蓄積していた。さらに、立ち仕事中心の生活で姿勢が崩れやすく、巻き肩傾向や体幹の支持力不足により、骨盤や背骨への負担が増していた。その結果、肩関節だけでなく、腰痛なども時折出現していた。
既往歴
特記すべき疾患・外傷歴はなし。
お悩み
・理容師としての業務中、肩の可動域制限や痛みにより作業が辛くなること。
・長時間同じ姿勢が続くと肩や腰に痛みが出てしまい、集中して仕事を続けられないこと。
・日常生活では、趣味のゴルフや手芸に取り組む際にも肩の動かしづらさがあり、楽しみを制限されていること。
初回の状況
初回来院時には、立位姿勢での崩れが顕著に見られた。特に骨盤周囲の歪みや体幹の安定性不足が目立ち、背骨全体の柔軟性も乏しい状態であった。
可動域検査では、右股関節と左股関節の動きに大きな左右差が認められ、肩関節においても右肩と左肩の動きに明らかな差が存在した。左肩は挙上動作時に強い制限があり、90度前後での保持が困難であった。施術後には一時的に可動域の改善が見られるものの、戻りが強く、継続的なケアの必要性が確認された。
そのため、ご自宅でも実践可能なセルフエクササイズや体幹を安定させるための体操を指導し、日常生活の中での習慣化を促した。
6回目の状況
6回目の来院時には、仕事中に感じていた肩の痛みはほぼ消失していた。特に理容業務において長時間腕を挙げる作業でも以前ほどの辛さがなく、快適に仕事を継続できる状態へと改善が見られた。
また、長時間の立位作業や同一姿勢の維持後に感じていた腰や肩の違和感も軽減し、体全体の動きやすさが向上している。姿勢の崩れも徐々に改善し、体幹の安定感が増したことで、仕事だけでなく日常生活にも良い影響が出ている。
現在は、肩の痛みが落ち着いたことを踏まえ、趣味であるゴルフや手芸を痛みなく楽しめるような体作りを目標にして取り組みを継続している。特に「仕事を長く続けながらも趣味を充実させたい」という本人の希望が強く、セルフケアと施術を組み合わせた長期的なコンディショニングを実践している。
まとめ
今回の症例は、長年の理容師としての職業特性から、肩周囲に大きな負担を抱えていた70代女性のケースである。仕事に直結する肩の可動域制限が主訴であったが、姿勢や体幹の安定性といった全身的な問題が背景にあった。定期的な施術とセルフエクササイズの併用により、肩の痛みは6回の介入でほぼ消失。仕事中の負担軽減に加え、趣味を安心して楽しめる体作りを目指して継続的なサポートを行っている。